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はじめに
「将来はマーケターとして活躍したい」
「市場価値の高い人間になりたい」
そう考えて就職活動を進める中で、多くの学生が必ずぶつかる壁があります。それが、「支援会社(エージェンシー・コンサル)」に行くべきか、「事業会社(メーカー・Webサービス等)」に行くべきかという問題です。
どちらも「マーケティング」に関わる仕事であることに変わりはありませんが、その業務内容、求められる資質、そして得られるキャリアは驚くほど異なります。この選択を誤ると、「想像していた仕事と違う」「やりたいことができない」という早期離職の原因にもなりかねません。
本記事では、新卒マーケティング職志望者が知っておくべき「支援会社 vs 事業会社」の構造的な違いを徹底解剖します。表面的な仕事内容だけでなく、ビジネスモデルや将来のキャリアパスまで踏み込んで解説するため、あなたの適性を見極めるための判断材料として活用してください。
目次
- 「支援会社」と「事業会社」の決定的な違い
- 支援会社(代理店・コンサル)のリアル:修行と専門性
- 事業会社(メーカー・サービス主)のリアル:愛着と総力戦
- 【適性診断】あなたはどっちに向いている?
- 新卒で選ぶなら?キャリアパスの視点から考える
- 選考突破のための志望動機・自己PRの作り分け
- まとめ:マーケターとしての第一歩を踏み出すために
1. 「支援会社」と「事業会社」の決定的な違い
まず、両者の定義とビジネスモデルの違いを明確にしておきましょう。ここを理解していないと、面接での志望動機が的外れなものになってしまいます。
1-1. ビジネスモデルの違い
最も大きな違いは、**「誰のお金で、何を売るか」**です。
-
支援会社(クライアントワーク)
- 顧客: マーケティング課題を抱える他社(クライアント)。
- 商品: 自社の「ノウハウ」「技術」「実行力(人)」を提供。
- 収益源: クライアントから支払われるコンサルティングフィー、広告運用手数料、制作費など。
- 役割: クライアントの成果を最大化するための「パートナー」や「参謀」。
- 代表例: 広告代理店(電通、博報堂、サイバーエージェント等)、SEOコンサル、SNS運用代行、マーケティングツールベンダーなど。
-
事業会社(インハウス)
- 顧客: 一般消費者(B2C)または他企業(B2B)。
- 商品: 自社で開発・製造した「製品」や「サービス」。
- 収益源: 自社商品が売れた時の売上・利益。
- 役割: 自社商品を市場に広め、売上を作る「当事者」。
- 代表例: トヨタ、P&G、花王、USJ、リクルート、メルカリ、SaaS企業など。
1-2. 関わり方の深さと広さ
マーケティング活動における「範囲」にも違いがあります。
| 特徴 |
支援会社(エージェンシー) |
事業会社(インハウス) |
| 担当範囲 |
特定領域に特化(広告、SEO、SNSなど) |
上流から下流まで(商品企画~販促~CRM) |
| 関わる数 |
多数のクライアントを同時並行 |
自社商品・サービスに一点集中 |
| 予算 |
クライアントから預かった予算内で最大化 |
自社のP/L(損益計算書)を見ながら予算配分 |
| ゴール |
クライアントのKPI達成(CPA、ROAS等) |
事業のKGI達成(売上、利益、LTV等) |
**支援会社は「狭く深く、数多く」**経験を積むことができ、**事業会社は「広く長く、深く」**一つの事業に向き合うという特徴があります。
2. 支援会社(代理店・コンサル)のリアル:修行と専門性
新卒で支援会社(特にデジタルマーケティングエージェンシー)を選ぶことには、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
2-1. メリット:圧倒的な成長スピードと専門スキル
支援会社の最大の魅力は、**「若手のうちから圧倒的な場数を踏めること」**です。
- 多様な業界・業種の事例を知れる
- 化粧品、金融、不動産、アプリなど、様々な業界のクライアントを担当することで、業界ごとの「勝ちパターン」を短期間で吸収できます。
- 最先端のノウハウに触れられる
- 支援会社は「ノウハウ」こそが商品です。社内には最新の広告手法やアルゴリズム解析の情報が集まっており、専門性を高める環境が整っています。
- 成果が数字で明確に出る
- 特にWeb広告運用などの場合、自分の施策が良かったのか悪かったのかが翌日には数字で出ます。PDCAを回す回数が圧倒的に多いため、スキルアップの速度が速いです。
2-2. デメリット:部分最適になりがち
一方で、支援会社ならではのジレンマも存在します。
- 「全体」が見えにくい
- 例えば「Web広告」だけを担当している場合、その後のWebサイトの改善や、商品自体の改良には口を出せないことが多いです。「もっとこうすれば売れるのに」と思っても、契約範囲外であれば手出しできません。
- クライアントの意向が絶対
- どんなに正しい施策だと思っても、クライアントの予算削減や方針転換があれば従わざるを得ません。あくまで「他社の商品」を扱っているという距離感は残ります。
- 激務になりやすい
- 複数のクライアントを抱え、それぞれの納期や定例会に追われるため、労働時間は長くなる傾向にあります。
2-3. 支援会社の種類(細分化)
一言で「支援会社」と言っても、その種類は様々です。
- 総合広告代理店: テレビCMからイベント、デジタルまで幅広く扱う(電通、博報堂など)。プロデューサー的な動きが求められる。
- デジタル専業代理店: Web広告運用に特化(サイバーエージェント、オプト、セプテーニなど)。運用型広告のスペシャリストを目指す。
- SEO・コンテンツマーケティング会社: 検索エンジン対策や記事制作に特化。
- マーケティングツールベンダー(SaaS): MA(マーケティングオートメーション)などのツールを提供し、その活用を支援する。
3. 事業会社(メーカー・サービス主)のリアル:愛着と総力戦
次に、メーカーやWebサービス企業などの「事業会社」でマーケターとして働く場合の実態を見ていきましょう。
3-1. メリット:事業成長への当事者意識
事業会社の最大の魅力は、**「自らの手でブランドや事業を育てる手応え」**です。
- 4Pすべてに関われる可能性がある
- Promotion(販促)だけでなく、Product(商品開発)、Price(価格設定)、Place(流通)のすべてに関与し、マーケティングミックス全体を最適化できます。
- 顧客の声を直接聞ける
- ユーザーインタビューやカスタマーサポートからのフィードバックを元に、商品を改良することができます。顧客と長く深い関係を築くCRM(顧客関係管理)も重要な業務です。
- 社内の他部署を巻き込む力
- 営業、開発、カスタマーサポートなど、社内の様々な部署と連携してプロジェクトを進めます。「組織を動かす力」が身につきます。
3-2. デメリット:配属リスクとジェネラリスト化
新卒でいきなり事業会社のマーケティング職に就くことには、特有の難しさもあります。
- 「マーケティング職」への配属枠が極端に少ない
- 大手メーカーなどでは、新卒はまず「営業」や「店舗」に配属され、現場を知ってから数年後にマーケティング部へ、というルートが一般的です。最初からマーケティングができるとは限りません。
- 専門性が身につきにくい場合も
- 事業会社のマーケターは、実際の広告運用や制作業務を「支援会社に発注(ディレクション)」する立場になることが多いです。そのため、具体的な運用スキルや制作スキルそのものは身につきにくい側面があります。
- 社内調整に時間を取られる
- 新しい施策を行うために、上層部の承認を得たり、他部署の協力を仰いだりといった「社内政治」や調整業務が多くなります。
3-3. 事業会社の種類(B2B vs B2C)
- B2C(一般消費者向け): 化粧品、食品、アプリなど。CMやSNSなど、生活者の感情に訴えかけるマーケティングが中心。ブランド構築が重要。
- B2B(企業向け): SaaS、製造装置、コンサルなど。展示会、ウェビナー、ホワイトペーパーなどを通じてリード(見込み客)を獲得し、営業にパスする論理的なマーケティングが中心。
4. 【適性診断】あなたはどっちに向いている?
ここまでの内容を踏まえ、あなたが「支援会社」と「事業会社」のどちらに向いているか、簡易的な適性診断を行ってみましょう。
A. 支援会社(代理店)向きの人
→ 「職能(スキル)」を武器に生きていきたいタイプは支援会社へ。
B. 事業会社(インハウス)向きの人
→ 「事業(ビジネス)」を創ることに喜びを感じるタイプは事業会社へ。
5. 新卒で選ぶなら?キャリアパスの視点から考える
「どちらも魅力的で選べない」という場合、**「ファーストキャリアとしてどちらを選ぶのが、将来の選択肢を広げるか」**という視点で考えてみましょう。
パターン1:支援会社 → 事業会社(王道ルート)
現在、マーケティング業界で非常に多いキャリアパスです。
新卒でデジタルエージェンシーに入社し、3〜5年ほど徹底的にWeb広告やSEOの運用スキルを身につけます。その後、その専門性を買われて事業会社のマーケティング担当として転職するパターンです。
- メリット: 若手のうちに「手に職」をつけられるため、転職市場での価値が高まりやすい。
- 注意点: 支援会社での業務があまりに細分化されすぎていると(例:特定の広告媒体の入稿作業のみ等)、事業会社が求める「全体設計力」が身につかないリスクがある。
パターン2:事業会社 → 支援会社(希少ルート)
新卒で事業会社に入り、ブランドマネージャーなどを経験した後、コンサルタントとして独立・支援側に回るパターンです。
- メリット: 「クライアント(事業主)の気持ち」がわかるコンサルタントは非常に重宝される。
- 注意点: 新卒でマーケティング職に配属される事業会社を見つけるのが難関(特に大手)。ベンチャー企業や、職種別採用を行っている企業を狙う必要がある。
パターン3:事業会社プロパー(経営幹部ルート)
新卒で事業会社に入り、営業現場などを経てマーケティング部へ異動、その後CMO(最高マーケティング責任者)や事業責任者を目指すルートです。
- メリット: 自社の文化や人脈を深く理解しているため、大きなプロジェクトを動かしやすい。
- 注意点: 下積み期間(営業など)が長くなる可能性があり、マーケティングにたどり着く前にモチベーションが維持できるかが鍵。
結論:新卒にはどちらがおすすめ?
「どうしてもマーケティングがやりたい!」「すぐに専門スキルを身につけたい!」という強い思いがあるなら、支援会社(特にデジタル系)がおすすめです。 配属リスクが低く、確実にマーケティングの実務経験を積めるからです。
一方で、「特定の業界(化粧品、自動車など)に強い興味がある」「その会社の商品が大好きだ」という場合は、事業会社を目指すべきです。 ただし、その場合は初期配属が営業になる可能性も覚悟の上で、「現場を知ることもマーケティングの一環」と捉えるマインドセットが必要です。
6. 選考突破のための志望動機・自己PRの作り分け
支援会社と事業会社では、面接官が見ているポイント(評価基準)が異なります。同じ「マーケティング志望」でも、伝え方を変える必要があります。
支援会社を受ける場合のポイント
- キーワード: 「課題解決力」「論理的思考力」「学習意欲」「成果への執着」
- NGワード: 「御社のファンです」「まったり働きたい」
- アピール例:
「私は学生時代、Webメディアの運営を行い、PV数を〇〇倍に伸ばしました。データを分析し、仮説を立てて検証するプロセスに面白さを感じています。御社のようなプロフェッショナルな環境で、多くのクライアントの課題解決を通じて、最短で一人前のマーケターになりたいです。」
支援会社は「クライアントの成果を出せる人材」を求めています。「学びたい」という姿勢よりも、**「早く戦力になって貢献したい」**というスタンスを見せることが重要です。
事業会社を受ける場合のポイント
- キーワード: 「顧客視点」「共感力」「巻き込み力」「ブランドへの愛着」
- NGワード: 「マーケティング『だけ』やりたい」「スキルを身につけて独立したい(早期離職懸念)」
- アピール例:
「私は御社の〇〇というサービスに救われた経験があり、この価値をもっと多くの人に届けたいと強く思っています。そのためには、まずは営業現場でお客様の生の声を徹底的に理解し、将来的にはその知見を活かしてマーケティング戦略の立案に携わり、事業の成長に貢献したいです。」
事業会社は「一緒に会社を大きくしてくれる仲間」を求めています。スキルだけでなく、ビジョンへの共感や、組織へのコミットメントを強くアピールしましょう。
7. まとめ:マーケターとしての第一歩を踏み出すために
「支援会社」と「事業会社」。どちらが正解ということはありません。
重要なのは、**「自分がどのような環境で、どのようなスピード感で、何のために働きたいか」**という自己分析です。
- スキルの幅とスピードを求めるなら「支援会社」
- 事業への愛着と深さを求めるなら「事業会社」
また、最近では事業会社の中に「インハウスマーケティング部隊」を持ち、支援会社並みの専門性を持つ企業も増えていますし、支援会社が自社プロダクトを持つケースも増えています。境界線は徐々に曖昧になりつつあります。
まずは、OB・OG訪問やインターンシップを通じて、それぞれの「現場の空気」を肌で感じてみてください。「ここで働いている人たちみたいになりたい」と思えるかどうかが、最終的な決め手になるはずです。
あなたのマーケターとしてのキャリアが、納得のいく形でスタートできることを応援しています。
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