
「特にプログラミングができるわけでもないし、デザインのスキルもない。文系だし、とりあえず『営業職』で応募するしかないのかな……」
就職活動を始めたばかりの学生の皆さんから、このような声をよく耳にします。しかし、これは大きな誤解であり、非常にもったいない思い込みです。
確かに、日本の新卒採用において「総合職」として採用され、最初に配属される可能性が高いのが営業職であることは事実です。しかし、近年のビジネス環境の変化、特にDX(デジタルトランスフォーメーション)やSaaS(Software as a Service)ビジネスの台頭により、「ビジネス職」の中身は劇的に細分化・専門化しています。
かつてのように「足で稼ぐド根性営業」だけがビジネス職ではありません。データを分析して戦略を立てる仕事、顧客の成功を長期的に支援する仕事、製品の魅力を市場に広める仕事など、新卒から目指せる選択肢は広がっています。
この記事では、漠然としがちな「ビジネス職(非技術職)」を徹底的に解剖し、**それぞれの職種が「何をするのか」「どんなスキルが身につくのか」「どんな人に向いているのか」**を、8,000文字を超えるボリュームで詳細に解説します。
これを読めば、あなたの職種選びの解像度は一気に上がり、エントリーシートや面接での志望動機が劇的に深まるはずです。
まず、言葉の定義をはっきりさせましょう。本記事で扱う「ビジネス職」とは、エンジニア(開発職)やデザイナー(クリエイティブ職)以外の、企業の収益活動や組織運営に直接関わる職種全般を指します。
これまでの日本企業では、以下のような大雑把な分類が一般的でした。
しかし、現代(特にIT・Web・コンサルティング業界や、DXを推進する大手企業)では、業務プロセスが科学的に分解され、専門職化が進んでいます。
新卒の皆さんが押さえておくべきカテゴリーは以下の4つです。
この記事では、特に採用人数が多く、かつ誤解されやすい「フロントオフィス」と「ミドルオフィス」を中心に深掘りしていきます。
近年、就活生なら絶対に知っておくべきキーワードがあります。それが**「The Model(ザ・モデル)」**です。
これは、セールスフォース・ドットコム社などが提唱・実践してきた営業プロセスモデルのことで、現在多くのIT企業やスタートアップ、先進的な大手企業が導入しています。
従来の営業は、一人の担当者が「リスト作成→テレアポ→訪問→提案→受注→アフターフォロー」まで全てを行っていました。これは属人化しやすく、担当者の負担が激増する原因でした。
「The Model」では、このプロセスを以下の4つに分業します。
この仕組みを知っているかどうかで、企業選びの視点は大きく変わります。「営業」という募集要項でも、中身が「テレアポ部隊」なのか「提案専門部隊」なのかを見極める必要があるのです。
近年、新卒採用でも非常に増えているのがこの職種です。
インサイドセールスは、電話やメール、オンライン会議ツールを使って顧客にアプローチする内勤営業です。しかし、単にリストの上から順に電話をかけまくる「テレアポ」とは目的が異なります。
マーケティング部門が獲得した顧客リストに対し、情報提供を行って信頼関係を築き、機が熟したタイミングでフィールドセールスにパスを出します。
いわゆる「THE・営業」ですが、そのスタイルは変化しています。
インサイドセールスから引き継いだ「確度の高い顧客」に対し、具体的な課題解決策を提案し、契約を結ぶ役割です(クロージング)。
現代のフィールドセールス、特にBtoB(法人向け)においては、**「御用聞き」ではなく「コンサルティング」**の要素が強くなっています。顧客自身も気づいていない課題を指摘し、「自社製品を使えばどう解決し、どれくらいの利益が出るか(ROI)」を論理的に説明する必要があります。
新卒で「成長したい」なら、断然新規開拓やソリューション営業の経験を積むことをおすすめします。難易度は高いですが、市場価値は跳ね上がります。
今、最も注目されている職種の一つです。「カスタマーサポート」と混同されがちですが、全くの別物です。
サブスクリプション型(月額課金)のビジネスでは、契約してもすぐに解約されてしまっては赤字になります。そのため、「使い続けてもらうこと」が極めて重要になります。CSは、オンボーディング(導入支援)や活用方法の提案を行い、解約率(チャーンレート)を下げることがミッションです。
「売って終わり」の営業スタイルに疑問を感じる人には最適です。「顧客の成功が自社の利益になる」というWin-Winの関係を築けるため、非常にやりがいがあります。 また、顧客の声を最も近くで聞くポジションであるため、プロダクト開発へのフィードバックを行うなど、開発部門との連携も多く発生します。
華やかなイメージがあり、就活生に大人気の職種ですが、その実態は非常に泥臭く、数字にシビアな世界です。
正直に申し上げますと、新卒でいきなりマーケティング部に配属されるケースは稀です(特に大手企業)。 理由は単純で、「現場(顧客や商品)を知らない人間が、効果的な戦略を立てられるわけがない」からです。多くの企業では、まず営業やCSで現場経験を積んでから、適性のある人が異動してきます。
ただし、Webベンチャーやスタートアップでは、人手不足や「デジタルネイティブの感性」を期待して、新卒からSNS運用や広告運用を任されるケースもあります。マーケティング職を強く希望する場合は、企業規模や業界選びが重要になります。
「企画職」も人気ですが、これも非常に曖昧な言葉です。
企画職は、社内のあらゆる部署(開発、営業、法務、経理など)を巻き込んでプロジェクトを進める必要があります。そのため、アイデア力以上に**「調整力」や「推進力」**が問われます。 新卒でここを目指すなら、インターンシップでの実績作りや、圧倒的なリーダーシップ経験のアピールが必要です。
いわゆる「バックオフィス」ですが、近年は「攻めのバックオフィス」がトレンドです。
日本企業ではジョブローテーションで様々な部署を経験することが多いですが、バックオフィス系は比較的スペシャリスト志向が強い領域です。 新卒から配属されれば、早期に専門知識(簿記、労働法、会社法など)が身につくため、転職市場でも「手に職」として評価されやすいメリットがあります。
一方で、AIやRPA(業務自動化)による代替が進みやすい領域でもあります。単なる事務処理ではなく、「経営層への提言」や「組織課題の解決」ができるレベルを目指す必要があります。
ここまで見てきて、「結局自分にはどれが合っているの?」と迷う方もいるでしょう。簡易的な診断指針を紹介します。
→ フィールドセールス(FS)
→ インサイドセールス(IS) / Webマーケティング
→ カスタマーサクセス(CS) / 人事
→ 企画・事業開発 / 広報
最後に、新卒で選んだ職種がその後のキャリアにどう繋がるか、具体的なパスの例を紹介します。
現代のキャリア形成において重要なのは、「職種 × 業界 × スキル」の掛け算です。
例えば、「営業しかできない」ではなく、「SaaS業界の(業界)」「大手企業向け営業ができ(職種)」「データ分析もできる(スキル)」人材になれば、市場価値は計り知れません。
最初の配属が希望通りでなかったとしても、そこで「何のタグが得られるか」を考え、次のステップへの武器にすることが大切です。
「ビジネス職」の世界は、皆さんが想像している以上に奥深く、そして広がり続けています。
就職活動において、「自分にはスキルがない」と卑下する必要はありません。文系未経験からでも、インサイドセールスやカスタマーサクセスといった新しい職種を通じて、専門性の高いキャリアを築くことは十分に可能です。
大切なのは、「なんとなく営業」ではなく、「この職種で、こういうスキルを身につけたい」という意志を持って選ぶことです。その意志があれば、入社後の成長スピードは段違いになり、数年後には「替えの利かない人材」になっているはずです。
この記事が、あなたの職種選びの視野を広げ、納得のいくファーストキャリア選択の一助となれば幸いです。
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