
「プルルルルルル…!」
静かなオフィスに鳴り響く電話の音。 新入社員のあなたはその瞬間、心臓が跳ね上がり、背筋が凍りつき、視線をPC画面に固定して「誰か出てくれ…」と祈る。
いわゆる**「電話恐怖症(テレフォン・フォビア)」**です。 これはあなたが悪いわけではありません。生まれた時からスマホがあり、連絡はLINEやDMが当たり前の世代にとって、 「誰からかかってくるか分からない」 「リアルタイムで返答しなければならない」 「会話が録音されているかもしれない(記録に残らない)」 という固定電話の特性は、まさにホラーそのものです。
しかし、ビジネスの現場では、まだまだ電話は現役です。 そして、新人の評価の50%は「電話の出方」で決まると言っても過言ではありません。 なぜなら、電話は**「会社の玄関」**だからです。 あなたの対応一つで、会社の信用が上がることもあれば、数億円の取引が消えることもあります(脅しではなく本当です)。
この記事では、電話への恐怖心を自信に変えるための「台本(スクリプト)」と、どんなトラブルも切り抜けられる「護身術」を伝授します。 これを読めば、次の着信音がチャンスの合図に聞こえるようになるでしょう。
「新人が電話に出ろ」という理不尽なルール。 これには3つの理由があります。
「3コール」というのは約10秒です。 1コール(3秒)で出るのが理想。「お待たせいたしました」を言わなくて済むからです。 3コールを超えたら、第一声は必ず「お待たせいたしました」です。 5コールを超えたら、「大変お待たせいたしました」です。
電話対応はアドリブ禁止です。全て「型」があります。この台本をPCのモニターに貼っておいてください。
受話器を左手で取ります(右手はメモのために空けておく)。 「お電話ありがとうございます。株式会社〇〇、新入社員の△△でございます。」 ※「もしもし」はビジネスではNGワードです。「もしもし」と言いたくなったら唇を噛んでください。 ※「新入社員の」と自分でつけてしまうのはアリです。「不慣れですが許してね」という予防線を張りつつ、相手も優しくなってくれます。
相手:「お世話になっております。△△商事の佐藤と申します。」 あなた:「いつもお世話になっております。△△商事の佐藤様ですね。」 ※必ず復唱(オウム返し)します。「佐藤さん」ではなく「佐藤様」と敬称をつけるのを忘れずに。 ※相手が早口で聞き取れなかった場合: 「申し訳ございません。お電話が少々遠いようでして、もう一度お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」 (「お前の声が小さい」とは言わず、「電話機のせい」にするのが大人のマナーです)
相手:「営業部の田中課長はいらっしゃいますか?」 あなた:「営業部の田中ですね、かしこまりました。ただいま確認いたしますので、少々お待ちくださいませ。」 ※ここでの「田中」は呼び捨てです。社外の人に対して自社の人間には敬称をつけません(〇〇課長とも言いません)。「課長の田中」と言い換えるのがスマートです。
絶対に受話器を手で押さえるだけで大声で呼ばないこと! こちらの話し声や笑い声が丸聞こえになります。必ず「保留ボタン」を押してください。 保留の限界は**「30秒」**です。それ以上かかりそうなら、一度出て「折り返し」にします。
【本人がいる場合】 「田中さん、△△商事の佐藤様からお電話です(3番です)」と伝えてバトンタッチ。
【本人が不在の場合(離席・外出・会議)】 ここが一番のパニックポイントです。
不在だった場合、相手の用件を聞いてメモを残す必要があります。 以下の「5W1H」を漏らさず聞きましょう。
【聞き方のコツ】 「念のため、折り返しのお電話番号をお伺いしてもよろしいでしょうか?」 (知っていても聞くのがマナーです)
書き終わったら、最後に自分の名前も書きます。「受:新人△△」。 これは「私が責任を持って承りました」というサインです。 そして、そのメモを本人のデスクの目立つところ(キーボードの上やモニターの縁)に貼ります。風で飛ばないようにテープや付箋を使いましょう。
これが一番怖いです。出た瞬間に怒号が飛んでくる。 「おい!どうなってんだお前の会社は!ふざけるな!」
ここでパニックになって「すみません!」と謝り続けたり、ガチャ切りしてはいけません。 クレーム対応の極意は**「サンドバッグになること」ではなく「避雷針になること」**です。
「ご不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ございません」 ※何について謝るか特定せず、まずは「怒らせたこと」に対して謝ります。
相手の話を遮ってはいけません。「でも」「だって」は禁句です。 「左様でございますか」「おっしゃる通りでございます」 ひたすら相槌を打ち、ガス抜きをさせます。人間、怒り続けるにはエネルギーがいります。3分も話せばトーンダウンします。
あなたが解決しようとしてはいけません。新人の手には負えません。 「私では分かりかねますので、責任者に代わります」 は火に油を注ぎます。「逃げた」と思われるからです。
正解は: 「詳細を確認し、早急に対応させていただきたいと存じます。担当の責任者(または上司)から、今すぐ折り返しお電話差し上げてもよろしいでしょうか?」 あくまで「解決のための前向きな提案」として上司にパスを回すのです。
ビジネス電話でよくある間違い敬語です。これを使うだけで「教養がない」と思われます。
| NGワード | OKワード | 解説 |
|---|---|---|
| もしもし | (なし) | 第一声は「お電話ありがとうございます」 |
| 〇〇様でございますね | 〇〇様でいらっしゃいますね | 「ございます」は物、「いらっしゃる」は人 |
| お声が小さいのですが | お電話が少々遠いのですが | 相手のせいにしない |
| 担当にお伝えします | 担当に申し伝えます | 身内には謙譲語(申し伝える) |
| ちょっと待ってください | 少々お待ちいただけますでしょうか | 「ちょっと」は子供言葉 |
| 了解しました | かしこまりました / 承知いたしました | 「了解」は目上には失礼 |
| なるほどですね | 左様でございますか | 「なるほど」はイラっとされる言葉No.1 |
受けるだけでなく、かける機会もあります。 かける時のマナーは「相手の時間を奪うことへの配慮」です。
話す内容、必要な書類を手元に置いてから受話器を取ります。かけてから「えーっと」と探すのは論外です。
「お忙しいところ恐れ入ります。今、お時間5分ほどよろしいでしょうか?」 必ず都合を聞きます。「今ダメ」言われたら、「では何時頃改めましょうか?」と即座に切り上げます。
いろいろなテクニックを書きましたが、一番大切なのは**「声のトーン」**です。 電話越しでも、相手が笑っているか、ムスッとしているかは驚くほど伝わります。
これを**「笑声(えごえ)」と呼びます。 通常の会話よりも、「ワントーン高く」「ゆっくり」「ハキハキと」**話すこと。 そして、誰も見ていなくても、受話器に向かってお辞儀をすること。 この姿勢は必ず声に乗って相手に届きます。
最初は怖くて当たり前です。 噛んでもいいし、保留を間違えて切ってしまってもいい(新人の特権です)。 大切なのは、「一生懸命対応しよう」という誠意です。
100本取れば慣れます。 1000本取れば達人になります。 まずは最初の1本、勇気を出して受話器を取ってみてください。 「お電話ありがとうございます!」 その元気な声が、あなたの会社のファンを一人増やすかもしれません。
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